STORY

2021.10.13

この人に、 会いに。

この人に、 会いに。

小柄な体からうまれる、力強く迷いのない言葉。

山田さんに会うたびに、そのギャップに惹きつけられる。

正しく、真っ直ぐで、ごまかしがない。

手織り絨毯という高価な商品に欠かせない優秀な販売員。

彼女は 20代半ばにして、その中心を担う人物のひとりです。

「今度、絨毯アドバイザーの資格をとるためにイランに行ってきます」

それから半年、さっそく山田さんに会いに行ってみました。

何もないという衝撃に胸を打たれた

手織り絨毯の世界は奥深い 。

4000年以上前からの歴史、文 化 、宗 教を含めた背景があり、その理解なくしては語れません 。

日本で は現在「 シルクロード絨毯塾 」という手織り絨毯のスペシャリストを育成するプログラムがあり、正しい知識を広めるためのカリキュラムを提供しています 。

山田さんが今回イランへ渡ったのも 、その一環だそう 。

 

「本当に何もない場所なんです。山間の遊牧地といっても 、緑が生い茂 る日本の 山とは別物で 、高い木が一本もない荒野なんです 。予備知識があっても 、実際に目の当たりにすると 、かなりもの 寂しい気持ちになります 。標識すらない道なき道の先には、電気も水道もない遊牧地。何もない中で生活するという 、日本と全く違う大地は衝撃的でした。ただ、何もない中で鮮やかなギ ャッベを生み出したという事実には胸を打たれましたね 。」

 

ギャッベから感じる女性の世界観

 

遊牧民の女性は働き者で有名。子育てや家事はも ちろん、羊毛から糸を紡ぎ、草木で染め上げ、丹念にギャッベ を織り上げるのも女性の仕事だそう 。

 

「男性はフレンドリーでもてなし上手です。女性は基 本的に客人の相手はせず控えめでした」
遊牧民の男女の役割は明確で 、日本とは違う一面もあります 。ただ 、ギ ャ ッ ベ の色柄は 、とても自由で解放的 。女性ならではの暖かみや華やかな世界観は 、家族を支える彼女たちの心の中を映し出しているようにも感じられます。

「 ギャッベのお客様は 、どちらかというと女性が多いですね。ご夫婦でも奥様の方が熱心なケースが多いかな 」と話す山田さん 。自身も、学生時代に手織り絨毯を織り上げた経験者。その際に参考にしたデザインがギャッベだったそうです。やはりギャッベには女性特有のシンパシーが存在するのかもしれません。

 

同じ国から生まれた対局的なペルシャ絨毯

 

「360度見る角度によって色が変わるんですよ」そういって山田さんが見せてくれたのは、ペルシャ絨毯。桜や薔薇をモチーフにした個性的な デザインは、これまで抱いていたイメージとはかけ離れたものでした 。

 

「ペルシャ絨毯は 、オーナーの好みがダイレクトに反映されるブランド品に近い感覚ですね。工房によって全く違う作品が生まれます 。桜や薔薇は 、ラジャビアン工房の特色です 。オーナーが大の日本好きなんです。今後もチャンスがあれば仕入れてきますので 、ぜひ見にきてください」こちらの気持ちを察するように、滑らかに語り出す山田さんの話は心地が良い。蛇口から勢いよく吹き出す水ではなく、トクトクと注がれ る上質な水のような安心感で 、つい「 もう一杯 」と、コップを差し出したくなってしまう。

この人に会いに行きたい。帰国後の彼女には、 そう思わせる力がありました。