STORY
2022.01.17
Old and New my Gabbeh オールドギャッベと暮らす3つのストーリー
story 01 with your life 「こぼしちゃだめよ」
小さい頃、よく母に「こぼしちゃだめよ」と言われたものだった。
それでも、お菓子を食べれば服や絨毯の上にボロボロとカスがこぼれたし、私は飲み物もよくこぼす子どもだった。
記憶に残っているのは、クリスマスの前の日だ。いつものように母が運んでくれたオレンジジュースは、やはり数秒後に赤い絨毯の上に広がった。
「これじゃサンタさんがこないよ」と叱られ、私はひどく泣いた。そして、結局叱ったはずの母が私を慰めるはめになったのだ。
翌朝、枕元にはクリスマスプレゼントが置いてあった。絨毯にこぼしたジュースの跡は、もうほとんどわからなくなっていて、私はそれが不思議で今度は丁寧にシミを探しはじめた。
不規則に濃淡が施された赤い絨毯を見つめて「この柄はこぼしたジュースで出来ているのでは?」と疑ったり「実は魔法の絨毯なのでは?」と疑ったりした。私は、そんな空間の時間が好きだった。
まだ4歳の私の娘も、やっぱりよく食べ物や飲み物をこぼす。母と同じように「こぼしちゃだめよ」と言いながら、もう何度この絨毯を拭いただろう。
小さな手でコップを握る娘の下には、あの日の絨毯が敷いてある。
いつか、彼女もここで空想を楽しむのかもしれない。
だから、ちょっとくらいこぼしたっていいんだよ。
story 02 with your favorite 「ヴィンテージ」
新品にはこだわらない。
時代や誰かの手を経て、深みを帯びたものが好きだ。モノも、人も。
私たちは、ひと回り以上歳の離れた結婚だった。夫が新居に持ち込んだのは、新品ではない絨毯。そこはかとなく漂う過去の気配も含め、私はそれを受け入れた。
私たちは「いつかの時間」に夫婦の足跡を重ねて過ごした。新婚を経て、子供が育って家を出て、二人きりに戻った今も、その絨毯の過去は知らない。
今年は結婚30年目で、どうやら真珠婚式というらしい。夫にいわせると「ヴィンテージ」で、この絨毯を買った年と同じだと笑った。
story 03 with your music 「オールドライオン」
テレビで観た海外バンドのドラマーは、絨毯の上で暴れるように演奏していた。当時はそれが刺激的で、強烈に憧れた。
絨毯が「オールドギャッベ」だと知ったのは約半年後。バイト代が貯まった頃だった。ただ、背伸びをしてやっと手にした一枚を乱暴に扱うことは到底できなかった。
それから社会人になって結婚して、ようやく建てた新居の片隅には、当時より色艶を深めたあの絨毯が敷いてある。
凛と佇むオールドライオンは、家を守る強さの証。きっと、今の僕には似合っているはずだ。
すべての一枚に、ストーリーがある。
古き新しき、オールドギャッベの世界をあなたにも。
オールドギャッベは、伝統的なデザインや文様、色合いが経年劣化によって熟成された絨毯です。
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