LIFE STYLE

2025.11.12

<睡眠スペシャル対談 > 医学から言えること、ふとん店だから言えること

<睡眠スペシャル対談 >  医学から言えること、ふとん店だから言えること

新しい睡眠習慣のヒントを探るような今回の特集、ぜひ医学の専門家の見解も伺ってみたいと松田医師に対談を依頼しました。睡眠と健康の相関関係、睡眠習慣を楽しみに変えていく知恵まで、それぞれの視点から睡眠について語り合いました。

違う視点で考える「睡眠」の大切さ

小野:子どもの頃からたくさんの寝具に囲まれて育ったためか、服や靴にこだわっておしゃれを楽しむように、自分に合った寝具を丁寧に選ぶことはかっこいいことだと思ってきました。今もその価値観は変わりませんが、お医者さんと寝具業界とでは、睡眠に対する捉え方がそもそも違うのかもしれません。先生はどんな印象をお持ちですか。

松田:医学界でもここ数年、健康のために睡眠が非常に大事だということが特に注目されています。医師として認識を正す意味でも、寝具のプロである小野さんとぜひお話ししてみたいと思いました。ただ、「睡眠をアクティビティに」っていう捉え方はちょっと意外で、とても興味を感じます。

小野:僕の周りで出会う人たちってみんな忙しくて、仕事の時間を確保するために睡眠時間を削っている人が多いんです。僕がふとん屋だと言うと「寝なくてもいい枕、作ってよ」なんて冗談を言われたり(笑)。

松田:さすがにそれは無理ですね(笑)。仕事のために睡眠を削るのは本末転倒。睡眠が足りないと日々のパフォーマンスにも影響します。良い睡眠を心掛ければ、仕事の効率も上がるしアウトプットの質も上がるのですが。

小野:確かに、しっかり眠れた日はめっちゃ元気でパフォーマンスが全然違います。なのに睡眠ってないがしろにされやすい。僕らとしては、睡眠を「寝なければいけないもの」という捉え方から「楽しみ」に変えていけたらいいなと。そこから寝具にもこだわってもらえるのではないかと期待しています。

松田:なるほど。それが「睡眠をアクティビティに」というテーマにつながるわけですね。

小野:実際、良い睡眠が取れていないと健康にも影響が出ますよね。

松田: その通りです。例えば睡眠時間が6時間以下の状態が1週間続くと、お酒に酔った状態と同等に判断能力が落ちると言われますし、5時間以下が習慣化すると健康障害のリスクも上がって死亡率が高くなります。

小野:理想的な睡眠時間はどれくらいですか。

松田:7時間、最低でも6時間は取ってほしいですね。ふとんに入って1時間経っても寝付けないことが常態化すれば「入眠障害」になりますし、逆に5分も経たずに寝落ちしちゃうのもあまり良くない。単に時間を基準にするというより、その人の状態に合わせた睡眠指導が大事になります。

そもそも眠りを楽しむとは?

小野:睡眠習慣は人によって違いますし、寝心地の好みも人それぞれです。理論上はこういったマットレスが最適だとされても、とにかく硬いマットレスでないと寝苦しいと言われる方もいて。理屈と主観のバランスの難しさを感じながら日々お客様に接しています。

松田:最近、医学的にも言われ始めているのが、数値的に測る睡眠の絶対量以上に、「しっかり眠れた〜」という充足感や満足感こそが大事だということ。ご自身の主観としてよく眠れたと感じている方が実は病気になりにくいという研究結果も出ているんです。

小野:数値にとらわれすぎたり、寝付きがどう、なんて言われると義務のようにに感じて、かえってストレスになるのかも。「寝ることが楽しい!」というように意識を変えられるといいですが、先生はそもそも睡眠は楽しめるものだと思いますか。

松田:その翌日にいつもより頭が冴えているとか、体が軽くて調子がいいな、みたいに気持ちよさを体感できることがまず大事でしょうね。それが睡眠の質によるものだとわかれば睡眠の優先順位も上がり、楽しみを付加したいという発想にもつながりそうです。

小野:僕は普段からいい寝具を使っているので、おふとんに入る瞬間の幸福感を毎日実感しています。と言っても睡眠中は何も活動していない「無」のイメージ。睡眠時間そのものを楽しむのはさすがにどうしたらいいのかわかりません(笑)。

松田:医学や科学の観点からそこに言及するのはまだ難しいですが、例えば最近では睡眠の質を可視化するため、スリープテックの領域でアプリや計測機器が出てきています。今後、データが蓄積されればより詳しいことがわかってくるでしょう。

目覚めた瞬間から睡眠準備は始まる!?

小野:医学的に睡眠の質を具体的にイメージするとしたら、どんなことが言えますか。

松田:例えば寝酒をすると寝付きがいいという人は多いですよね。寝落ちしやすくなるので確かに寝付きという点では効果はありますが、摂取したアルコールを分解するため入眠後も体内では活発に内臓が働きます。その負担がかかって睡眠りが浅くなり、中途覚醒もしやすい。つまり睡眠の質は下がるんです。

小野:寝ている間も体は休んでいないということ。

松田:そう。コーヒーに含まれるカフェインも、寝る前の6時間前までに摂取した方がいいと言われています。それぐらい睡眠に影響があるからなんです。

小 野:セロトニン(精神を安定させる働きを持つと言われる脳内物質)は、朝起きて太陽を浴びた瞬間から分泌されるとも言われますね。

松田:はい、日中、日光を浴びて体内時計をリセットするところから、すでに良い睡眠のための準備は始まっていると言えます。

小野:起きている時間が良い眠りのためにあるのだとしたら、そこを意識して生活している人は一歩先を行ってる感じでかっこいい。そういうライフスタイルがもっと広がっていくといいな。

松田:睡眠を単に休息と捉えるから生産性のない無駄な時間と感じてしまう人もいるのだと思います。寝る間を惜しんで仕事をしている方がかっこいい、と。本当はしっかり寝て、最高のパフォーマンスを発揮できる方がいいですよね。

小野:理想的な数値や基準以上に、感覚的な満足感が大事というお話が印象的でした。睡眠の環境や寝心地の好みにも幅があるので、それに対応していくことが僕ら寝具のセレクトショップの大事な役割なのかもしれないなって。

松田:ふとんに入ることを楽しみに変えるという発想はいいですよね。睡眠を積極的な活動や趣味にすることが文化になっていくといいなと思いますし、医師としても日々の睡眠習慣が健康にプラスに寄与してくれることを期待しています。